蒼き狼と白き牝鹿~元朝秘史~

(メガCD/光栄/シミュレーション)

その昔光栄の歴史三部作シリーズというのがあって「信長の野望」「三國志」「蒼き狼と白き牝鹿」の事を指していた。信長や三國志は今でも新作が出続けているが「蒼き狼と白き牝鹿」は4作目が1999年に出たきり新作の予定を聞かない。題材がいまいちマイナーな為だろうか。

「信長」は舞台が日本だから言うに及ばず、「三國志」も吉川英治の小説や横山光輝の漫画のような優れた宣伝媒体があった為結構知られている。さて「蒼き狼」というと一応チンギスハーンを題材にした歴史SLGなのだが、これがどうもしっくりとこない。教科書の上ではその変わった名前と肖像画から、曹操や劉備よりあるいは有名かもしれないがかといってこの人に主人公に何しろというの? といった感じでどうも取っつきづらい。

ゲームの目的はこの手のシリーズの十八番である全国統一。なんだけども「信長」が日本統一で「三國志」が中国統一というものに対して「蒼き狼」は世界統一なのである。スケールがでかすぎてどうもピンとこない。要するに世界征服するゲームなのだが世界征服なんて聞くと子供向けヒーロー番組のへっぽこな悪玉って感じがしなくもない・・・・・・と、いうような印象を万人が受けたかは知らないがやはり「信長」「三國志」と比べると馴染みが薄いのである。

そんなわけで僕がこの「蒼き狼」を手にしたのは発売から結構経った頃で、その頃でさえ積極的に手にしたというわけではなく、ゲームショップでファミコン版のサウンドウェア(音楽CD)付新品が1980円で売っていたから値段とCDにつられて買ったというだけであった。何しろ予備知識がまったくといっていいほどなかったのである。さすがにチンギスハーンの名前くらいは知っていたし、世界の大半を征服した人ってくらいの認識はあった。しかもよく見れば日本も出てくるじゃないか。源頼朝。ああ、同時代の人なんだねぇ・・・・・・と、何かとっかかりを見つけてプレイを開始したものだった。

今回挙げる「元朝秘史」は1980円で買った「蒼き狼と白き牝鹿~ジンギスカン~」の続編でシリーズ三作目にあたる。僕が買ったのはメガCD版という当時から既にマイナーだったマシンのソフトで、こちらはさすがに新品2980円くらいはしたんじゃなかろうか。この頃既にファミコン版の前作はクリアしていたし、その独特のシステムを気に入っていたから以前と違って積極的に(それでも2980円まで値が下がるのを待ったわけだが)購入した。このソフトCD版と同時にカートリッジ版も出ていてCDの読み込みがない分快適にプレイするにはそちらの方が適していたのだが、CD版は音楽CDの曲が入ってるし、何よりオリジナルのシナリオが一本追加されているというのだ。しかも舞台は日本というのである。


前作もそうだったがこの「元朝秘史」には「モンゴル編」と「世界編」のシナリオがある。「モンゴル編」ではテムジン(チンギスハーン)がモンゴルの統一を目指すシナリオで、マップもモンゴル内部を細分化したものになっている。モンゴルを統一するとそのまま世界を舞台にした「世界編」に移行するか選択できるのだった。で、「モンゴル編」から「世界編」に移行するときのメリットとして「モンゴル編」で部下にした優秀な人材をそのまま「世界編」に連れていくことができる(人数制限はあるが)というものがあった。なんで「モンゴル編」から「世界編」を続けてプレイする意義は十分あるのだけれど、やはり馴染みが薄いチンギスハーン。前作をプレイしていて世界背景とかの知識を多少は仕入れたとはいえ、やっぱり部下にムカリやボオルチュ、なんて言われてもちっとも親しみがわかないのである。一応ソフト内に人物辞典みたいなものがついていてある程度どういった人物なのかわかるようになってるのだが、ジャムカやチャガタイなんて言われてもやっぱりね・・・・・・。

そんなユーザーの為を思ったか(?)、このメガCD版はカートリッジ版や元になったPC版にないオリジナルシナリオ「日本編」を追加してくれたのであった。おお、ナイスだ光栄!


この「日本編」、一言で言えば「モンゴル編」の舞台と登場人物を日本にしただけではあるが、プレイヤーが選べるキャラクタは、源頼朝・平清盛・木曾(源)義仲・藤原秀衡の4人。この中から一人選んで日本を統一し、その後は優秀な人材を選抜して世界制覇に乗り出せるというものだった。ええ、そりゃもう日本でやりとげましたよ世界制覇。
で、ここでこのゲームの少し独特なシステムについて触れたい。まずは内政なのだが「信長」や「三國志」の場合、実行するのに金をかけてその分だけ国力が上がるというシステムだった。例えば町造りに金30かけたら町の開発度が15上がった・・・・・・・とか。この「元朝秘史」は自分でせこせこ金をかけて内政コマンドを実行しなくてもコンピュータが勝手にしてくれるのである。と、書くとなんだかプレイヤーの介入の余地がない味気ないものに思えてくるがさにあらず。なるほど国力の数値を上げる操作はコンピュータがするが、その大本の部分はプレイヤーが行うことができる。住民配分というシステムを使うのである。内政の主な項目には農産品・畜産品・特産品・町造りといったものがあり、これらの自領の住民を配分してそれによって国を富ませていくのである。例えば町造りに人口の40%を振り分け、あとの三つに20%ずつ振り分けてみる。当然一番比率の高い町造りが最も優先的に行われるわけで、これにより国力に特色と差ができる。また特産品はその土地ならではの商品であり、毛皮やガラスなどを作って商人に売ることができる。さらに土地により気候というものがあって、温暖湿潤気候とか冷帯多雨気候なんてあってこれにより内政の結果に影響(食料の収穫が少ないとか)が出てくる。とはいうもののプレイしていて気にしたことはほとんどないのだが、単に住民配分だけでなくその土地によって戦略が変わっていくということはわかる。

ゴーリー

次に軍事だが、これはもう多彩な兵種が全てを物語っている。「信長」ならば足軽・騎馬・鉄砲といった程度の分け方しかされてなかった兵の種類が、ここでも土地によって色々と違ってくる。モンゴルなら蒙古騎兵、インドなら象兵・中国なら火砲兵・・・・・・など、系16種類の兵がいて当然能力に差がある。象兵と戦う武士や騎士と武士が同じ部隊で共に戦うということも夢ではない。1部隊が4つの兵で編成される為、一つの部隊を四つの兵種で編成できるという楽しみもあるが・・・・・・正直なところ、このゲームの戦争はたるくてやってられなかった。コンピュータ任せにして戦争を見ないという設定にすればスピーディに進むのだが、自分で部隊の指揮をとるとなると非常に時間がかかる。実際自分でやってた時は最初こそ初めて見る兵種を使ってみたくて直接指揮をとったりしたが、中盤から終盤にかけて戦はほとんどコンピュータ任せに進めてしまったのであった。もうちょっと手軽にできればかなりはまったと思うんだけどなぁ。


そしてオルド。身も蓋もない言い方をすると子作りコマンドなのである。一応このシリーズの売り、というか注目部分になっているシステムの一つであり、このコマンドを使って子供が生まれると男子なら自分の後継ぎに、女子なら部下終わったらお疲れさま・・・に嫁がせて一族にすることができる。登用した異国の将軍が実に小気味良く裏切るこのゲームにおいて一族は絶対である。領主にしようが手元で飼い殺しにしようが絶対に裏切らない。こんなのもいるだから男子だろうが女子だろうが子は宝というわけで、世継ぎのいない君主にとっては必須のコマンドなのである。何しろ目標が世界制覇である。1年が4ターンで終わるこのゲーム、余程年齢の若い君主でも選ばない限り一代で制覇は困難なのだ。なのでここで子作りに励んで子孫を増やせば2代3代・・・・・・というか数十年数百年と続けられるのであった。僕がやったときは確か200~300年くらいかけて世界制覇したっけなぁ。気の長いゲームだ。


ボルテ

少し話が脱線したのでオルドに戻すが、単にコマンド実行すればすぐ「子供産まれました」なんて出てくるわけじゃない。ラッチ最初に自分のヨメさん口説くところから行わないといけないのである。この辺りが一見お堅く見えるこのゲームの馬鹿ゲーらしいところなのだが、ヨメさんをおだてたり贈り物なんかしてご機嫌をとらないと行き着くところまで行かないのである。しかも馬鹿っぽさに拍車をかけてるのがこのオルドシーンに音声が入ってるという事である。さすがはCD版、なんて感心するより先にそんなしょーもないところに力入れてどうするんだ・・・・・・という呆れる気持ちの方が当時強かったのだが、銀河万丈の野太い声で赤面するような愛の語らいを耳にするとつい笑ってしまい、これはこれで気に入っている。

当時友人とマルチプレイをやったときも皆戦争で勝つより、自分んとこのヨメさん口説き落とす事に熱心というダメ君主ぶりを披露していた。余談だが当時ワイドショーなどで羽賀研二と梅宮アンナの交際騒動が取り沙汰されており、羽賀研二の事を「誠意大将軍」なんて小馬鹿にした報道をしていた記憶がある。たまたま友人が源頼朝を使っていたときに思ったのだが、

源頼朝(羽賀研二)・北条政子(梅宮アンナ)・北条時政(梅宮辰夫)

という構図を想像してしまった。別にオチはないのだがもしあのまま二人がくっついたとしたらカミさんの尻に敷かれる亭主になっていた事だろう。時代を感じるエピソードである(どこが)。


戦闘画面

ところで先に数十年数百年とゲームを続けられると書いたがこれもこのゲームならではの特徴。子孫が残せるシステムが・・・・・・というより実在の人物の重みがあまりないことが原因のような気がする。というのもこのゲーム、世界を舞台にはしているが各国の人材の詳細な情報を網羅しているわけもなく、あくまでも有名な人物のみ登場しているだけなのでマイナーな国の人材なんて誰も実在したのかすらわからないような連中ばかりなのである。しかもこれらの実在の人物達は戦争や寿命で簡単に死んでいくので瞬く間にその数は減っていく。だがこのゲームはそういった現象で人手が足りなくならないようにコンピュータが勝手に人材を作成してくれるのである。人材登用無論架空の人物なのだが、どーせ全世界の武将の知識なんざ持ち合わせてないのである。この点なまじ知識のある「信長」や「三國志」より抵抗感はない。だがさすがに200年300年と経過するとゲーム上の史実の人物は死に絶えるので架空の人材のみの世界になってしまう。オルドで作った子供には自分で名前をつけられるが、在野から拾ってくる人材はまったく馴染みのない連中のみ。ある意味ファンタジーの世界を楽しめるような人でないとこのゲームを満喫するには厳しいかもしれない。

なんだか褒めてんだかけなしてんだかよくわからない文章になってしまったが個人的には好きなゲームなのである。現在プレイステーションで発売されている「元朝秘史」はこのメガCD版が元になってるらしい(日本編あるみたいだし)ので、今度買ってみようかと少し思っている。メガCD版よりはテンポが早いはずだろうし。2000年代までプレイできるのかなぁ・・・・・・。







戻る
inserted by FC2 system