新入社員とおるくん

(SG1000シリーズ(アーケード)/セガ(コナミ)/アクション)


不敵な新入社員

3月ともなると寒さはまだ続くとしても、もう春と言っていい時期でございますよ。春と言えば入学式、あるいは入社式。はじまりの時期であり、出会いの時期でもあります。それらについてどういう印象を受けるかは人ぞれぞれでしょうけど、皆さんどんな感じでしたかね。僕なんか専門学校の入学式の際、場所は明治神宮でやったんですが会場入口付近でおっさんおばさんが謎のビラを配ってたのですよ。見てみると「○○専門学校(ウチの学校ね)は暴利だ!」とかなんとか色々とこれからウチ等が入学する学校の批判が書いてあったんですわ。肝心の式の時に校長の話が退屈だったのでずっと読んでいたのですが、アレ読んでこの学校の行き先に不安を覚えたってのが記憶に今も残ってます。入社式の方は無縁なので印象も何もないんですが。

で、今回紹介するのはそんな新入社員時代の初々しい記憶(自分にはないが)を呼び覚ます素敵なゲーム、新入社員とおるくんです。これをやって入社した当時は何事にも真面目で勤勉で活発だったあの日のことを、見るからに性格悪そうで無能な上司に対しても忠実に甲斐甲斐しく仕えたあの日のことを思い出してみようじゃないか! そう、新入社員という言葉の響きにはそれだけの効果があるはずだ・・・・・・・・と、思いきや主人公のとおるくん、 


いきなり社内の女狙ってます


なんなんだおまえはーって叫びたくなるくらいに非模範的な新入社員だったりする。では彼の日々の勤務態度を紹介してみよう。しかしこのとおるくんって、作ったメーカーにモデルになるような奴いたのかな。


モテすぎる女とモテすぎる男

さてこのゲームはステージクリア型のアクションゲームで、面構成はオフィス→廊下→更衣室→廊下→社員食堂→廊下→前庭という面構成になっている。最初のステージはオフィスなのだがこのオフィス、突破百万台と書かれた黒板があって、その前に教卓らしき机。そしてその黒板に向かって社員の机がずらずらと並べてあるのだが・・・・・どう見てもオフィスって言うよりは教室と言った方が正しい机の配置だ。なんでどの机も同じ方向向いてるんだ。教卓の前には課長が落ち着きなくうろちょろしてるし。で、我らが主人公とおるくんの席は端っこの一番後ろ。学校やなんかで勉強不熱心な人には嬉しい位置ではなかろうか。そしてここからとおるくんの過酷な戦いが始まるのだ。面と面を繋いでいる廊下は別として、このゲームの面クリアの条件は社内のそこかしこに散らばっている(とおるくんの?)ハートを全て集めることだ。しかしこのハート、説明書を読むとこれを集めて憧れの彼女にプレゼントするのだって事が書かれてるのだが・・・・・・・・何なんだろうな、これ? ハート=自分の気持ちっていうならまだわかるんだが、それが社内中に落っこってたり、人にプレゼントするようなもんなんだろうか? よしんばそういう類の物だったとして彼女はそんなん貰って嬉しいのだろうか・・・・・・・と、昔のゲームにこういったツッコミはタブーだぜって疑問をつい抱いてしまうのだが。まあキン肉マンにおける超人強度みたいなもんか・・・・・・・と無理矢理納得してハート集めに専念しようじゃないか。最初のステージではハートはとおるくんの同僚達がその机に大事に保管している。この同僚ってのが説明書の人物紹介を見ると、「会社中の恋のライバル達」とか書かれていて要するにことごとく敵なのだ。とおるくんが狙っている彼女はみゆきちゃんというのだが、彼女は社内の男子社員の憧れの的だそうで、その彼女を狙うとおるくんに敵意剥き出しなのだ。じゃあ女子社員はどうかというとこれが皆、とおるくんに片思いしていたりしてやはりとおるくんの恋路の邪魔をしてくる。ホントになんなんだよこの会社は・・・・・・・・・。


悪山課長との死闘

・・・・・・・・ったく、なんて奴らだ。ちゃんと仕事しろ、仕事。と言いたいところだが最初のステージに関してはみんな真面目に仕事してるのだ。で、そんな中ハート集めに燃えるとおるくんは敢然と(席を)立ち上がり、同僚達からハートを巻き上げる戦いを開始するのだが、この巻き上げる方法ってのが、


尻アタアアアアアアアアアアッック!


そして、


ヘッドバアアアアアアアアアット!!


という、およそ新入社員という言葉から感じられる初々しさとはかけ離れたワイルドな攻撃方法で同僚達を蹴散らしていく。入社早々社内の女狙うくらいだからよほど軟派な奴かと思いきや、実は結構硬派なのではなかろうかという錯覚を覚えつつ、ハートを集めていくとおるくん。だがそんな彼の前には彼の直属の上司にして、最大の障壁、悪山課長が立ちはだかる。彼はとおるくんがハート集めに立ち上がるや否や、猛然と向かってきてとおるくんをとっちめようとするのだが、とおるくんが席に着くと、改心したと判断してまた教卓の前に戻る非常にわかりやすいキャラだ。とおるくんが席にさえ着けば、それが例えケツアタックで無理矢理奪い取った席でも頓着しないあたり、剛腹な課長と言えよう。しかしこの課長、プレイヤーととおるくんにとっては最大の敵だが、冷静に考えると正義は明らかに課長の側にあるんだよな。なんせ勤務中にいきなり自分の持ち場離れて同僚をケツアタックで蹴散らして所持品分捕ってるんだもんとおるくん。普通注意くらいするわな。っていうか注意程度じゃ済まないだろって感じだが、とおるくんは新入社員のくせしてこの直属の上司すらヘッドバットで倒します。目的の為には手段を選ばない男だ。まったく、自分の非を棚に上げてそれを注意しようとした上司に頭突きを食らわすなんて良心のある人間には出来ない所行だろう。というごくごく常識的な判断をするプレイヤーの背中を押すかの如く、またまたマニュアルの自己紹介文が振るってます。


悪山課長「部下をいびることこそ、私の生きがいだ。ワハハハ」


・・・・・・・なんなんだお前は。たまに人が真面目に仕事しようと思ってずっと席に座っていると問答無用でファイル投げてきて1ミスになるし。ホントに大丈夫かこの会社。


みゆきちゃんとドライブに行こう

その後も、更衣室ではバスケットボール、食堂ではタコを邪魔者に投げつけてハートを順調に集めていったとおるくんは、ついに会社の前庭で憧れのみゆきちゃんと待ち合わせることができました。晴れてくっついた二人はとおるくんのスポーツカーに乗ってどこぞへ(多分海)走り去っていきましたとさ。とおるくん幸せだっただろうなあ・・・・・・・・・・と、そこへまたしてもマニュアルの紹介文を。

みゆきちゃん
「みんな、いい人みたいだけど・・・。あたしは、あたしのために一生懸命に
  なってくれる人が一番なの。それは、誰かしら?」

とか、のたもうてます。っていうか。


誰かしら? じゃねえだろスボケ!


主体性というものがないのかお前は。どんな人が好き? と聞かれて「やさしい人」と答えるのと一緒だ。やさしけりゃ誰でもいいのか。この理屈で言うと、とおるくんよりも一生懸命な人が現れたらすぐさま乗り換えるって事か。なんか報われることが薄そうだなあ。ああ、哀れかなとおるくん・・・・・・・。


とおるくんは今いずこ?

儚くも美しいとおるくんの戦いは終わった。みゆきちゃんとの楽しいデートを終えるや次の瞬間からまた何事もなかったかのようにハート集めに専念するのはお約束だ。しかしこのゲーム、元々コナミのアーケードゲームをSG1000に移植したものなんだろうが、SG1000用のゲームタイトルには「新入しゃいんとおるくん」の上に小さく「コナミの」と書かれてたりする。作ったのがコナミなんだから当然と言えば当然なのだが、ゲームタイトルにわざわざ「コナミの」と付けた辺りに深い意味を感じる。もしかしたらこの当時(84年代)、コナミ社内にとおるくんのような人がいたのかもしれない。無論、いたとしても同僚をケツアタックで押しのけたり、頭突きで上司を倒したりというのではなく、入社早々に社内の女の子にちょっかい出したりしたって程度なんだろうが。しかしあのときメモのメーカーが出したゲームって所にちょっとした因果関係を感じたり・・・・・・・・・・・しないわな、やっぱ。

最後の最後に余談だが、このゲームに使われているBGMはビートルズの有名な曲なんだそうな。あいにくと曲名を失念してしまったがとにかくビートルズの曲らしい。と、いうことをつい最近(ここ1~2年)知った。なので以前レンタルビデオ屋かなんかでこの曲が流れているのを聴いて「とおるくんの曲流してるよー。えれーマニアックな店だなー」などとアホな感想を抱いたことがあった。そんな古くてマニアックなゲームの曲、誰が店に流すんだっつーの。

後日談になるが、前述したBGMのタイトルをやはりレトロゲームを扱っているサイト「おいら的あの頃ゲーム」の管理人アクセルさんより「Hard Day's Night」と教えて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます・・・・・・・・・って、多分見てないだろうな。

更に後日談。この新入社員とおるくん、なんと海外輸出されてました。いや、ひょっとすると逆かもしれん。その名もMIKIE。どー考えても日本人女性の名前っぽいんですが舞台は会社じゃなくてなんとハイスクール! 主人公は金髪の学生! 設定的にこっちの方が無理のないような気がするのでひょっとしたらこっちが元祖なのかもな。まーどっちでもいっかぁ。




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